読書週間 良き本を読み 良き人生を創る

2012年11月4日(日)更新:3
【社説】
 秋の夜長は、虫の音を耳にしながら、本の世界に入り込む――そんな至福を、十分味わってみたいもの。11月9日まで「読書週間」である。今年の標語「ホントノキズナ」は、“本(書物)との絆”と“本当の絆”の掛け言葉で、読み手の想像力を、ちょっとくすぐる一文だ。
 もし「初めての本との出あいは?」と問われたら、「家にあった本」「母や父による読み聞かせ」などの答えが最も一般的で自然だろう。夜、眠る際に母親が絵本を読み聞かせてくれたおかげで、本好きになったという人は大勢いる。  

〈「育児」や「共育」を通して〉
 本紙「活字文化」欄でも紹介した「信州しおじり 本の寺子屋」は、地方発のユニークな読書環境づくりの試みとして注目されている。“発案者”は編集者の長田洋一氏(雑誌「文藝」元編集長)。取材の際、氏は、若者の「活字離れ」を言いはやすだけの無責任な風潮に、強い嫌悪感を示しながら語った。「今は活字離れどころか“活字知らず”が起きています。赤ちゃんや幼児は、まずは親が本を読んで聞かせてあげなければ、確かに“本知らず”のまま成長するのです。やはり父母や祖父母の影響力は大きい」
 ひるがえって、学会の婦人部は、長年にわたり、家庭や地域での“絵本の読み聞かせ”を推進してきた。もともとは読書の苦手な若い母親も、ヤング・ミセスの活動を通して感化され、わが子に読み聞かせを実践する中で、親子共に本が大好きになる……このような、ほほ笑ましい「育自」や「共育」の体験は、全国津々浦々、枚挙にいとまがない。
 かつて池田名誉会長は、歴史家トインビー博士の史観(時間の遠近法)に触れて語った。“華々しく報道される大事件も、時が経過すれば収縮していくが、むしろ人々が気付きさえしない精神世界の緩やかな動きは、歴史を創りゆく力として、堂々と真価をあらわしていく”と。

〈意義深い創価の女性活動〉
 これに照らせば、多くの創価の女性が、ごく当たり前のように良書を日常的に求め、良書に触れる機会を身近な人に広げている事実は、たとえ社会的には目立たない営みだとしても大変意義深い。
 楽しい本や絵本を介せば、家族のだんらんも親子のスキンシップも十分できる。そんな、ささやかな喜びの積み重ねが、幸せな家庭の土台にもなっていく。私たちは「良き本を読むことは、良き人生を創り、良き人生を生きていくこと」と銘記し、心豊かに秋を過ごしたい。
   (聖教新聞 2012-10-31)