一緒に先生も成長できると思ったからだよ

2013年2月7日(木)更新:4
【名字の言】
 「先生はどうして教師になったの?」。生徒から時折、こうした質問を受ける、と高校教諭の壮年部員が語っていた。そんな時は、決して否定的な答えを返してはいけないという▼「別に深い理由はない」「君には関係ない」――これは最悪の返答である。目の前の教師は、自分への関心が深いのか浅いのか。生徒は敏感に大人の言動の本質を見抜く。「一緒に先生も成長できると思ったからだよ。人を育てるのは最高の仕事だ」――彼は生徒と心の交流を結ぶチャンスと捉え、力強く、こう答えるそうだ▼ちょっとした会話の中に、信頼の土台が固まるか、揺らぐかの分かれ目が潜んでいる。強固な信頼の基盤があれば、その上に、絆の柱を何本も立てることができる▼思春期は自我の確立期である。「アイデンティティー」(自己同一性)という造語を世に送り出した、米国の精神分析学者エリクソンは、「信頼」を強調した。子どもは信頼する力を身につけることで、自信、自発性、勤勉さを培う、と(佐々木正美著『エリクソンとの散歩』子育て協会)▼信頼の「頼」の字には「さいわい」の意味がある。教師や親は、子どもから信頼される存在へと自ら成長し、未来の宝が「幸福」に輝く社会を創る責任がある。(杏)
   (聖教新聞 2013-02-07)