他人であっても心から語り合えば、かけがえのない命にも替わりうる

2013年4月1日(月)更新:4
【名字の言】
 「ここには、ハンセン病の患者は一人もいません」。岡山県ハンセン病の国立療養所を訪れた時、はじめに担当者が説明してくれた▼この療養所には、270人余の入所者が暮らしている。だから、初めて訪問する人の中には、漠然と、“この療養所には、多くの患者がいる”と思い込んでいる場合が少なくないようだ。1940年代にはプロミンなど同病の特効薬が開発され、入所者は、後遺症があっても、すでに“元患者”なのである▼連載中の小説『新・人間革命』の「勇将」の章に、「無知は偏見を生み、偏見は差別を育てる」とあった。正しい知識と理解、そして、一人の尊厳を大切にする心。これらを欠くことが、過去に、どれほど多くの悲劇を生んできたか。歴史の教訓に真摯に学びたい▼先日、三重県青年部主催の平和講座で、ハンセン病問題について取材を重ねるメディア関係者が講演した。“人権感覚を養うためには、徹して人と会い、語り合うこと”との一言が印象に残った▼御書に「他人であっても心から語り合えば、かけがえのない命にも替わりうる」(1132ページ、通解)と。一人を理解し、心を通わせる対話こそ、社会に人間の尊厳を取り戻す“武器”となる。未来を照らす光源となる。(弘)
   (聖教新聞 2013-04-01)