希望の源泉・民音音楽博物館

2013年4月4日(木)更新:5
【社説】
 「お子さんの来館者がぐっと増えました。ネットなどで見て、課外授業で利用してくれるのです」。民音音楽博物館(東京・信濃町民音文化センター内)の上妻重之館長代行が語った。
 2003年12月25日、民音の音楽資料館が「登録博物館」の認可を受けた。博物館となったことで、音楽資料館の貴重な資料を一般に幅広く公開することができるようになった。認可に当たっては、東京都教育委員会の厳格な審査が行われた。その決定に当たり、同委員会は13もの類似博物館を視察したという。

〈“生きた音楽文化”伝える〉
 次の2点が認可の決め手となった。一つは、音楽資料の第一人者である小川昂氏の指導のもと、全国を回り約20万点の資料を収集したこと。特に、明治以降に出版された和書の85%を集めたことが類例を見ないと評価された。
 もう一つは、約200年前のピアノが、単に所蔵・保管されるだけでなく、定期的に演奏されていること。つまり“死んだピアノ”ではなく、“生きたピアノ”である点が注目を集めた。
 民音音楽博物館の古典ピアノ室では、「演奏できるのは世界で4台」といわれる「アントン・ワルター」はじめ、貴重な古典ピアノの実演が楽しめる。
 きっかけは、民音創立者・池田名誉会長の提案にあった。かつて名誉会長は、展示を見終わるやいなや「楽器なんだから、来た人には必ず音色を聴かせてあげよう」と一言。「30年、40年経ったら、世界中から芸術家や学者が来るようになる。今のうちにしっかり勉強しておきなさい。そして世界への音楽芸術の発信基地となっていきなさい」とも語った。
 希少な楽器や資料を貴重品として保存するだけでなく、“生きた音楽文化”として伝えていこうとの指針だった。

〈来館者は160万人超に〉
 登録博物館の認可から今年で10年を迎える。30万点を超える音楽資料を有し、民間で日本最大級の音楽の博物館として親しまれる。これまで119カ国・地域から7000人以上の芸術家や指導者が来訪し、惜しみない賛辞を送ってきた。一般の来館者は160万人を超え、企画展や文化講演会も活発に開催されている。昨年、神戸の関西国際文化センター内に「西日本館」も誕生した。
 “幅広い音楽文化を民衆の手に”――名誉会長が民音を創立して半世紀。民音音楽博物館は“文化創造の希望の源泉”として人々の心に潤いを届けている。
   (聖教新聞 2013-04-04)