生命尊厳を守り抜く連帯を!「平和の文化」を時代の潮流に

2013年4月20日(土)更新:7
・『争いの根本解決に必要な示唆がある――教授』
http://d.hatena.ne.jp/yoshie-blog/20160911


【アルスター大学での平和セミナー SGI会長のメッセージ(要旨)】
 本日は、北アイルランドの和平合意が調印されてから15周年の佳節にあたります。
 思い返せば、ここベルファストで調印がなされる前日(4月9日)、私は、南アフリカ共和国のムベキ副大統領(当時)と東京でお会いしていました。
 アパルトヘイト(人種隔離政策)がもたらした苦しみや憎しみを乗り越えようと挑戦を続ける南アフリカの人々に思いをはせる一方で、その日に最終期限を迎えていた北アイルランドの和平交渉の成功を強く念じつつ、「平和共存の社会」を築くための方途について語り合ったことを思い起こします。
 それだけに、期限を過ぎても交渉が続けられ、翌10日に和平合意に達したとのニュースに接した時は、心の底から祝意がこみ上げてきました。
 30年に及ぶ紛争で犠牲となられた方々のご冥福を哀心よりお祈りするとともに、仏法者である私自身の決意として、「地球上から悲惨の二字をなくす」ためのさらなる対話と行動を固く誓ったことを覚えております。
 「平和の文化」は「戦争の文化」という大海に浮かぶ小島のような存在である。しかし、絶対に希望を捨ててはならない。たとえ一つでも“平和の島”が存在するなら、それは必ず、二つ、三つと広がっていくであろう――。
 これは私が対談集を編んだ、平和学者のエリース・ボールディング博士が、夫君のケネス博士と共有してきた信念として述べておられたものです。
 このボールディング博士夫妻の確信を、現代の世界で実証されるがごとく、紛争が社会に残した傷痕(きずあと)や、長年の対立がもたらした心理的な境界を乗り越えることの難しさに直面しながらも、「平和の文化」の道を進むことを選び取り、一歩また一歩と、「和解」と「共存」に向けた挑戦を粘り強く重ねてこられたのが、北アイルランドの皆さま方にほかなりません。
 かつてマンデラ元大統領が、「私たちは長い間、北アイルランドの人々を尊敬してきました。私たち南アフリカと同様に、多くを耐え忍び、そして今、新しい社会の建設のために皆で手を取り合って立ち上がっているからです」との共感を寄せていたように、皆さま方の存在は、過去の分断の歴史を乗り越えようと懸命に努力する世界の人々、そして、いまだ紛争や内戦に苦しむ各地の人々にとって、何にも替え難い心の希望の支えとなってきたのです。
 本日、ご臨席のポーリーン・マーフィー名誉教授は、私が創立した東京・創価学園を3年前に訪問された折、次のように生徒たちに語り掛けてくださいました。
 「今、私たちが生きている21世紀という時代は、今までの中で最も危険な世紀なのではないでしょうか。価値創造を正しく認識しなければ、私たち人間という生命が危機に陥ってしまうと思います」
 今こそ、そのメッセージを世界中で共有し、時代の潮流を「戦争の文化」から「平和の文化」へと力強く向けていかなければなりません。
 では、21世紀に生きる私たちが、共に追求すべき価値とは何か。
 私は、15年前の和平合意の成立を底流で後押しした北アイルランドの人々の切々たる思い――すなわち、“もうこれ以上、テロや暴力によって人々の命が奪われる悲劇が繰り返されてはならない”との思いを、民族や人種、宗教や文化の違いを超えて分かち合いながら、「かけがえのない生命の尊厳」を互いに守り抜くための連帯を促す価値でなければならないと思います。
 和平合意から15周年を迎えた本日、ここベルファストの地において、「分離された社会と世界における平和構築」をテーマにしたセミナーを開催されることは誠に意義深いものがあります。
 今回のセミナーの大成功を心よりお祈り申し上げるとともに、アルスター大学および国際紛争研究所のますますのご発展と、ご列席の皆さま方のますますのご健勝を心から念願し、私のメッセージとさせていただきます(大拍手)。
   (聖教新聞 2013-04-19)