グローバルリーダーの素養を伸ばす

2013年4月25日(木)更新:4
【未来を創るSOKA――「人間教育の現場から」 (1) アメリ創価大学
《卒業生に聞く エレンドロ・シング・レイチョバンさん》
ハーバード大学修士号を取得 インドの平和と開発に尽くす〉
●第一に「創造性を育む」ことです。
 学生が研究テーマを発案し、教授と相談しながら、扱う文献、授業内容などを決めていきます。より有意義な授業の構築を追求する中で磨かれた創造力は、卒業後、社会の一員として働く中で非常に生きています。
 SUAには数十カ国の学生がいます。異なる思想や信条をもつメンバーと一緒に授業をつくり、実地研究を体験することで、自らの価値観や研究方法に、新たな視野を与えてもらうことが多くあります。
 第三に「教員と共に学びを深める」という点です。
 教員が学生と同じ目線で研究を手伝ってくださる中で、教員の方々の授業に臨む姿勢や、研究のアプローチ法などを知ることができ、良き模範として自身の学習方法に生かすことができました。
●国際社会の課題と向き合うため、現地に行き、SUAの仲間と解決の方途を探りながら、試行錯誤してきました。
 その中で、蓄積した知識を、現実の世界で新たな価値を生む「智慧」へ昇華させ、行動していくことの重要性を認識しました。
 創立者は、アメリカのコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジにおける講演で、地球市民の育成について「他者との“対話”と“交流”と“参加”は、一つ一つが、価値を創造する貴重なチャンス」と語られています。まさにLC(ラーニング・クラスター)は、創立者の理念を具現化する「グローバルリーダー」育成の教育プログラムであると実感します。
 LCで学んだことを生かし、故郷・インドの発展に力を尽くします。


《担当教員に聞く イアン・リー助教
〈「机上の知識」が価値生む「智慧」に〉
●2011年から「ブラジルの貧困と不平等」を研究しています。12人の学生と共に、奴隷制や軍政の歴史、近年の経済成長、犯罪・人種的不平等などの社会悪の要因、政府の具体的政策を調査してきました。
●1998年にベトナムとネパールで始まり、世界各国に広がる「フォト・ボイス」の運動を体験しました。
 これは、写真を通して地域の実情を政府に提示し、生活環境の改善を求める運動です。
 “傍観者”として写真を撮るだけでなく、現地の人々にもカメラを渡し、一緒に撮影する中で心を通わせていきます。
 写真を通し、第三者はもちろん当事者である現地の人々にも、地域の現状を客観的に認識してもらうのです。
 ――こうした研究は全て、学生たちの企画と伺いました。
 そうです。それがLCの大きな魅力です。
 「何をどう学ぶか」「何のために学ぶか」「現地に行くべきか」。学生たちは文献を読み込む中で議論し、“自分たちの授業”を構築します。教員が授業内容を決めることは簡単ですが、学生を信じ、任せることで、彼らの可能性が開花していくのです。
 本年のブラジルの実地研究に関するスケジュール調整、資金調達やNGOとの連携など、9割は学生が進めました。
●世界に飛び出し、現地の文化や人々の生活に触れることで、「机上の知識」は、“自分にできることは何か”という「創造の智慧」へと変わります。
 学生たちは、「異文化」に出合った時、主に二つのことに気づきます。
 第一に、自国の文化との共通性の発見です。
 ブラジルのある地域に根づく伝統的な民謡の起源を知った時、インド出身の学生は「私の故郷にも同じような歌がある」と感動していました。こうした経験が異文化理解を深めます。
 もう一つは、「文化の尊重」と「人権の擁護」の間で、どちらを優先すべきかという葛藤です。
 “社会で果たすべき責任とは何か”と自問しながら学ぶ10代・20代にとって、貧困を目の当たりにすることは、大きなショックです。まず学生は“状況を打開できる方法は何か”と考えます。
 しかし、第三者から見れば貧困地域でも、現地の人々にとっては慣れ親しんだ生活空間です。
 独自で培ってきた「文化」と、他者が持ち込んだ価値観ともいえる「人権」のどちらを守るべきか。とても繊細で難しい問題です。
 この難題に直面すると学生たちは一つの解決の糸口を見つけます。それが「対話」です。学生たちは、現地の人々の声に耳を傾け始めるのです。
 ――“現場”に入っていく中で社会の諸課題の本質に迫り、解決への具体的なアクションを起こす。その経験が学生の学びを深めるのですね。
 SUAの使命は「地球市民の育成」です。
 地球市民の要件とは何か。私は「異文化を尊敬できる心」と「対話によって人と人を結ぶリーダーシップ」をもつことだと思います。まさに創立者・池田先生のような人物です。

〈研究内容を米・地元紙が紹介〉
 LCは新たな価値を創造し、他者に貢献する地球市民の素養を伸ばす重要なプログラムです。
 光栄にも、カリフォルニア州・オレンジ郡の地元紙「オレンジ・カウンティレジスター」が、私たちのLCの模様を2度にわたって掲載し、「アメリ創価大学の学生が南米での研究で、素晴らしい成果」と紹介してくださいました。
 SUAのLCは、世代を超えて後世に伝え残していくプログラムにしていきたい。学生が、より一層、国際社会への責任と、「自らが主体者である」との自覚を強められるよう、情熱を注いでいきます。
   (聖教新聞 2013-04-22)