きょう、国際生物多様性の日 地球規模の視点持ち“賢い人”に

2013年5月24日(金)更新:6
【社説】
 終戦間もない1946年、作詞家の茶木滋は、幼い長男を連れて買い出しに出掛けた。途中、長男が小川をのぞいて言った。「メダカがいるよ。メダカの学校だよ」――これをきっかけに、童謡「めだかの学校」は誕生した。当時はありふれた光景だったろう。だが現在、メダカは「絶滅のおそれのある種」である。
 創価学会牧口常三郎初代会長が大著『人生地理学』を発刊して、本年10月で110周年を迎える。「富国強兵」を国家のスローガンとして掲げ、日露戦争へと突入していく世の中にあって、初代会長の慧眼は、人間の利益優先主義などによる地球環境の悪化を憂えていた。

〈先見の明ある「共生」の思想〉
 牧口会長は、自然と「共存」「共生」「共鳴」しゆく人間の在り方を提示。人間と環境は影響し合うとする仏法の「依正不二」の考え方に通じる洞察だった。
 実は、同著の発刊から2年後、1905年に絶滅したといわれる動物がある。
 ニホンオオカミである。
 古くは農地を荒らすシカやイノシシを餌とし、人間と共存。しかし伝染病や開発による生息地の縮小で数が減った。追い詰められたオオカミは家畜を襲い、ついに人間の手で絶滅に追い込まれた。
 環境省の最新の「レッドリスト」によると、日本では50種の動物が絶滅または野生絶滅し、ツシマヤマネコシマフクロウなど、1338種もの動物が絶滅危惧種とされている。また国連の「ミレニアム生態系評価」によれば、全世界で生物種が絶滅する速度は、自然な状態の100〜1000倍に達しているという。
 「生物多様性」とは、人間が生存するのに不可欠な基盤である。多様な種が生存する環境は、変化に強く安定しており、人間生活の長期的な保障につながる。そして地球生命が向かう先は、人間自身がどう行動するかにかかっている。

〈自然の大切さを語り合う〉
 環境省は「生物多様性」ホームページで、個人で取り組める具体的な行動を提唱する。例えば、「食べ物がどこから生まれたか考える」「ペットは最後まで飼う」「自然の恵みや大切さを家族と語る」「生き物のつながりを脅かすものを語る」など。「MY行動宣言」の登録や、「生物多様性クイズ」などもあり、意識を高められる作りとなっている。
 きょう22日は、国際生物多様性の日。人間が真の意味で「ホモ・サピエンス(賢い人)」として生きるための哲学を、地球規模の視点で確かめる日としたい。
   (聖教新聞 2013-05-22)