人間勝利の頂へ挑戦の日々を

2013年6月2日(日)更新:6
【社説】
 世界最高峰のエベレストに、三浦雄一郎氏が3度目の登頂を果たした。80歳という史上最高齢の記録に目を見張る。
 ジョージ・マロリーらが国の威信を背負って挑み、その後1953年、エドモンド・ヒラリーらが初登頂者として歴史に名を刻んだ。きょう29日は、ちょうど60周年にあたる。時とともに、人と山の関わりや登山自体がさまざまに変化してもなお、人が山に引かれ続けるのは、登頂の感動が変わらないからこそだろう。

〈自己の限界を押し上げる〉
 マロリーは、しつこい記者の質問にうんざりしていた。「なぜ山(エベレスト)に登るのか」。彼は少し投げやりに「そこに山があるからだ」と。有名な言葉にまつわる意外なエピソードを、プロ登山家の竹内洋岳氏が、いたずらっぽく笑いながら、本紙の取材時に教えてくれた。
 竹内氏は、日本人で唯一、エベレストはじめヒマラヤに連なる8000メートル峰の全14座を登頂している。長く滞在すること自体が「死」を意味する高高度の登山の厳しさをよく知る人だ。その極限を行く登山に、氏は何を思うのか――。
 「私は、数週間の登山を通して、生物が何億年とかけた進化の過程を再現しているような気がするんです」。一般に、ヒマラヤの登山では徐々に高度を上げ、低圧・低酸素下における体にかかる負荷を強めながら高所に順応していく。
 「人間の潜在能力を、いかに発揮して“進化”できるのかを試しているのだと思います。自己限界を押し上げる。私たちは頂上に向かうことを『サミット・プッシュ』と言います。この言葉を使う時は、まさに、自分を『頂上』へと『押し上げる』感覚なんです」
〈歩み続けることが唯一の道〉
 池田名誉会長は戸田城聖第2代会長の言葉を紹介し、語っている。「創価の使命とは何か。それは、全人類の人格を最高の価値へと高めゆく挑戦である」と。
 私たちの世界広宣流布への本格的な道程は、人類が未踏の、比類なき高みへと続く歩みに他ならない。そして、私たちは、その歩みを踏み出しているのだ。
 エベレストの登山でも、たとえ、ゆっくりと、一歩一歩だったとしても、歩み続けることが頂への唯一の道となる。
 “人間勝利の頂”へ、“限界”を超えゆく挑戦の日々を通して、自身を一段と高みへと押し上げていきたい。そして、「なぜ広布に生きるのか」――もし問われたなら、答えは確信強くありたい。
 「ここに人間が生きているからだ」
   (聖教新聞 2013-05-29)