希望と確信の声で絆を結べ

2013年7月5日(金)更新:4
【社説】
 江戸時代から400年の歴史をもつ歌舞伎は、「声」の魅力を伝える伝統芸能である。音楽、舞踊、演技による総合演劇としての華々しいイメージが先行しがちだが、優れた歌舞伎役者は、「一声、二顔、三姿」と表現される。観客を魅了する役者の要素として、容姿や演技よりも、声質やせりふ回しの「声」が第一に挙げられているのだ。
 次元は異なるが、創価学会も「声の力」で多くの人の心をつかんできた。友人・知人の心に信頼と友情の花を咲かせる広宣流布の「対話運動」は、智慧と勇気を湧き立たせた声の力によって推進されてきたといってよい。

〈“どのように話すか”も大切〉
 「非言語コミュニケーション」の研究者レイ・L・バードウィステル氏は、興味深い研究成果を残している。
 それによると、2人で対話する場合に伝わるメッセージのうち、“言葉によって伝えられるもの”は全体の35%。残りの65%は声の調子、動作、表情など“言葉以外の部分”によるという。“何を話すか”とともに“いかに話すか”が、相手との実りある対話を進める上で大切なポイントであることを示している。
 対話や交流の手段としては電話も有効だろう。今や、わが国の携帯電話・PHSの加入契約数は総人口を上回っており、普及率は110%を超えた(平成24年度、総務省調べ)。多くの国民が気軽に電話で語り合える環境にある。
 携帯電話の普及に伴って、メールやSMS(ショートメッセージサービス=携帯電話同士で短文を送受信できるサービス)の利便性も向上している。しかし、文字の交信だけでは感情や思いは伝わりにくい。メールに頼るだけでは誤解さえ生むケースも少なくない。

〈遠方でも“心の距離”は近く〉
 電話の先に相手の顔を思い浮かべ、ほほ笑みながら、遠くにいても“心の距離”は近くして、語り合いたい。
 池田名誉会長はかつて、こう綴った。
 「誠実に信念を語る人間の声ほど、美しい音律はない。法華経では、人びとのために法を説く菩薩の声を『深浄(じんじょう)の妙声(みょうしょう)』と讃えている。電話での語らいは、この声の力の真価を、最大に発揮するチャンスである」(「随筆 人間世紀の光」〈対話こそ わが人生〉)
 希望に満ちた明るい声、相手を思いやる温かい声、そして確信あふれる声――そんな、声と声の交流こそが、心と心を結び、人と人の絆を結び付けていく。
   (聖教新聞 2013-07-05)