一人の人材を育成する労苦は百年万年の未来を開く意義と可能性がある

2013年7月29日(月)更新:4
【名字の言】
 NHKで放映中の大河ドラマ「八重の桜」。舞台は、戊辰(ぼしん)戦争屈指の激戦・会津戦争から、明治維新の動乱期へ移る▼新政府軍に敗れた会津藩は「逆賊(ぎゃくぞく)」と呼ばれ、苦難の運命をたどる。だが、維新後も有為な人材を社会に多く送り出し、存在感を示し続けた。藩政の中核を担った山本覚馬(かくま)は維新後、京都府顧問となって文明開化の諸施策を推進。白虎隊士(びゃっこたいし)だった山川健次郎は、東京帝国大学(現・東京大学)の総長に。他にも医療、文学、経済、外交など、多くの分野で旧・会津藩士が活躍した▼なぜ、これほど人材が出たのか。彼らは皆、藩校「日新館(にっしんかん)」の出身だった。かつて、大飢饉からの復興事業の要として、一藩士が創設を建言(けんげん)。彼には信念があった。「教育は百年の計にして藩の興隆は人材の育成にあり」と▼治乱興亡(ちらんこうぼう)と毀誉褒貶は世の常。しかし、魂を込めた「教育」「人材育成」の足跡は、時代の激流に翻弄されることはない。負けて勝つ――その会津の不屈の歴史は、まさに「百年の計」によって開かれたものだった▼一人の人材を育成する労苦には、百年、万年の未来を開く、遠大な意義と可能性がある。夏は、学会伝統の人材育成の季節。次なる勝利へ、ともどもに、有意義な錬磨の日々を送りたい。(鉄)
   (聖教新聞 2013-07-26)