小説「新・人間革命」執筆20周年 広布に生き「宿命」を「使命」と

2013年8月12日(月)更新:7
【社説】
 「その執筆は、限りある命の時間との、壮絶な闘争となるにちがいない。しかし、自身のこの世の使命を果たし抜いてこそ、まことの人生である」
 池田名誉会長が、そう決意を定め、長野・軽井沢で、小説『新・人間革命』のペンを執ったのは、広島の原爆投下の日から48年にあたる、1993年(平成5年)8月6日であった。明日は、その執筆開始から20周年の佳節を刻む。
 小説『人間革命』『新・人間革命』を貫く主題は、「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする」である。

〈随所に光る「蘇生のドラマ」〉
 『新・人間革命』では、「宿命転換」の原理が明かされていく。
 すなわち、法華経法師品の文や、妙楽大師の「願兼於業」の釈をあげ、「末法に妙法を弘める私たちは、人びとを救うために、あえて悪業を背負い、願ってこの世に出現した」と綴っている。
 ――私たちは、広宣流布の使命を果たすために、地涌の菩薩としてこの世に生を受けた。病苦や経済苦等々、自身の背負っている苦しみ、悪業は、それを乗り越え、宿命を転換することによって、仏法の偉大さを証明するためにある。つまり、広宣流布に生きるならば、「宿命」は、そのまま「使命」となる。転換できぬ宿命など断じてないのだ。
 小説には、その宿命転換のドラマが随所に描かれている。
 “被爆二世”として生まれ、後遺症に苦しんできたがゆえに、平和を願い、反戦出版の中心者として活躍する広島の青年。在日韓国人として不当な差別に泣いてきたことから、日韓の心の懸け橋になろうと、両国で妙法の種子を植えてきた夫妻。

〈“希望の哲学”を精読し実践〉
 “宿命は使命”と捉える、この逆転の発想は、創価の友の困難に立ち向かう人生哲学として、各人の生き方に深く根差し、まさに人間蘇生の力となってきた。
 デューイ研究センターのヒックマン所長は、一般的な仏教の「宿業」は、消極的なイメージがあるとし、学会の「宿命転換論には人間一人一人の責任を喚起していく力があります」と述べている。
 『新・人間革命』は、日蓮仏法を根底にした“希望の哲学”“勇気の哲学”に彩られている。その精読と実践こそ、まさに「全人類の宿命の転換」の道であることを確信したい。
   (聖教新聞 2013-08-05)