自信は成長をもたらす力

2013年11月7日(木)更新:1
・『未来の使者』
http://d.hatena.ne.jp/yoshie-blog/20180919


【新・人間革命 若芽 十一】
 山本伸一は、教員たちに笑いながら言った。
 「先生に間違ったことを教えられては困るので、今日は、私が授業をします」
 そして、椅子から立って黒板に向かい、チョークを手にした。
 ――「さいた さいた さくらが さいた」
 彼は、こう書き、児童たちに促した。
 「じゃあ、読んでください」
 子どもたちは、元気な声で読み上げた。
 「うん。上手だね。よく読めたね」
 子どもたちを讃えたあと、今度は、教員たちに語った。
 「私が小学校の最初の授業で習った文章です。忘れないものなんです。当時は、平仮名ではなく、片仮名で教わったけどね。
 最初の授業というのは大事なんです。その時に、子どもたちが、“勉強って面白いな”と思えれば、しっかり学んでいくようになるでしょう。反対に、“なんてつまらないのだろう”と感じれば、勉強嫌いになっていきます。何事も始めが肝心なんです」
 語りながら、彼の脳裏に、小学一年生の思い出が蘇った。ある時、初めて作文を書いた。担任の先生は、「とても上手に書けています」と褒めてくれた。嬉しかった。
 さらに、学年で二人だけ選ばれて、その作文を発表することになった。
 それが自信につながり、書くことに楽しさを感じるようになった。伸一が後年、詩や小説などを好んで書くようになった淵源は、この時にあったのかもしれない。
 教育者でもあったフィリピン独立の父ホセ・リサールは、「一度みんなの前でほめられた子どもは、次の日にはその倍も勉強して来ます」(注)と記している。
 伸一は、児童たちに語った。
 「皆さんは、黒板の文をとてもよく読めましたね。それは、よく勉強していたからです。これから読めない字があったとしても、しっかり勉強していけば、必ず読めるようになるということなんです。皆さんは秀才です」
 自信は、成長をもたらす力である。
■引用文献
 注 ホセ・リサール著『ノリ・メ・タンヘレ―わが祖国に捧げる―』岩崎玄訳、井村文化事業社
   (聖教新聞 2013-11-01)